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箱根甲子園

哀愁靴

2024/03/09

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ここは箱根路国道138号線、

乙女トンネルを静岡側に抜け、峠の茶屋を過ぎたヘアピンカーブ手前の沿道。

忘れられ、哀愁の漂う片方だけの靴がたたずんでいる。

記憶が定かであれば数年前より放置されたままだ。

持ち主に捨てられたのか、もう片方はどこにいったのか。

豪雨に流されず、強風に飛ばされず、大雪に埋もれずこの靴は

自然の猛威に耐えそこにあり続けている。

普通は自然の猛威にさらされれば、流されるか飛ばされるか除雪車に持っていかれどこかに行ってしまうだろう。

だけどこの靴はそこにあり続けた。

持ち主が探しに来るの待っているのか、もう片方の片割れを求めているのか。

哀愁を漂わせ昼も夜も氷点下の日も灼熱の日もただそこにあり続け、幾年を重ねいつしか哀愁を纏うとまでの時が流れた。

もしこの靴に心があったとしたら何を思い何を求めるのだろう。

私はどうしてもこの靴を近くで見たい衝動にかられた。

靴は自然の猛威に数年さらされたとは思えない、まだ十分にはける状態であった。

縫製のほつれもなく型崩れもなく靴としての機能を十分に満たしていた。

驚くべき耐久性である。

私はその靴をそのまま放置することにした。

靴の気持ちも、元の持ち主の気持ちもわからない。

だけどこの靴はここでたたずみ続け風景の一部となるのが一番いいと

感じました。

旅人の方たち、どうぞこの靴を見かけてもそっとしておいてもらえると嬉しいです。

 

 

 


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