東急ハーヴェストクラブ静波海岸
豊かな自然に囲まれた静岡の山間地域。
“奥静岡”=“オクシズ”の愛称で呼ばれるこの地には、棚田や茶畑など人々のくらしに密接した昔ながらの美しい風景が残る。
今回の特集ではオクシズの清流が育んだ、本物を愉しむ大人のための嗜好品をご紹介。
ゆったりとした時間に身を委ね、豊かな食と文化を堪能したい。
My Harvest
突き抜けるような大空のもと、眼下に広がる茶畑を一望するウッドデッキに座りながら地産の日本茶を味わう非日常体験はいかがだろう。
ここは藁科川上流の山間部、諸子沢にある「黄金みどり茶園」が付帯するティーテラス「黄金の茶の間」だ。オクシズの安倍奥エリアでは、本山茶がつくられているが、佐藤浩光さんが営む「黄金みどり茶園」もその一つ。「黄金の茶の間」は、佐藤さんが生まれ育った築150年ほどの趣ある古民家を改装したという。
「黄金の茶の間」へは、まず山麓にある茶園で受付し、手渡される水出し黄金茶と地図を頼りに自力でアクセスする。約30分のハイキングで佐藤さんの待つノスタルジックな古民家に到着。母屋の前にはウッドデッキが設えられ、遠くの山々まで見渡す雄大な眺望が広がっている。
「眼下に広がるのは、ここにしか生息していない“黄金みどり”の茶畑です。30数年前に父と茶畑で見つけた突然変異の黄金色の茶葉があまりにもきれいだったので、挿し木で増やしていきました。新芽の時期には一面が黄金色に輝きます。茶葉はアミノ酸の多い甘みの強い味が特徴で、「黄金の茶の間」ではしずく茶で味わっていただけます。山の上で景色もよいのでお茶を楽しみながら、ぜひゆっくりしていってください」(佐藤さん)。
「黄金の茶の間」は、完全予約制で午前と午後、各4組まで。茶菓子とともに佐藤さん自らが“黄金みどり”のしずく茶をはじめ、煎茶、ギャバ茶など時期に応じたさまざまなお茶を振る舞ってくれる。ウッドデッキのほか、古民家の縁側や茶の間、室内のハンモック、離れに設けた足湯などもあり、ゆったりとくつろいでみたい。
オクシズの玉川エリアにあり、標高約200mの安倍中河内川のほとりに立つ「ガイアフロー静岡蒸溜所」。周囲を400m級の山々に囲まれ、静謐な空気とゆったりとした時間が流れている。ここは、この地でジャパニーズクラフトウイスキーを造りたいという熱い思いを持った中村大航さんが2016年に始めたウイスキー蒸溜所。
「発酵樽には静岡市産の杉材を使い、蒸溜するポットスチルには地元の薪の火を使うなど静岡県ならではのウイスキー造りを行っています。日本人のものづくりのDNAを感じさせる一滴を醸していきたいですね」(中村さん)。
こうしたこだわりのウイスキーの製造工程やウイスキー原酒が詰まった数千もの樽が並ぶ熟成庫を見学するツアーも催行している。ガラス越しにポットスチルを見るテイスティングルームでは、オリジナルの“シングルモルトウイスキー静岡”の原酒やガイアフローが輸入するクラフトウイスキーやスピリッツを有料で試飲できる。
また、今年ここで蒸溜されるウイスキー原酒をひと樽丸ごと予約購入できる樽オーナー制度「静岡プライベートカスク2022」も始まった。樽で3年以上熟成させた後に、ボトルに詰めて届けてくれるもの。人生の記念日を自分だけのウイスキーで祝ってみては。
安倍川上流の山間部、標高500〜600mに位置する有東木地区は、山葵の産地として知られるところ。実は、日本の山葵栽培は約400年前に有東木で始まり、その後、伊豆など各地域へ広まっていったとされている。
日頃より地元の食材の魅力を追い求めている東急ハーヴェストクラブ静波海岸の料理長・時見直幸も有東木の山葵に注目しており、6〜8月のディナーコース「La Nature~ラ・ナチュール~」には、この食材の魅力を生かしたオリジナルソースが登場する。
「有東木の山葵は爽やかな香りとまろやかな辛味が特徴で、魚との相性が抜群です。La Natureの前菜には、ハーブや葉物野菜をのせ、地元柑橘のヴィネグレットで和えた真鯵のタルタルに2種類のソースを添えました。その一つが有東木の山葵とクリームチーズを特殊な装置で仕上げた滑らかなソースです。もう一つはアルガンオイルに醤油の風味をつけた粉末状のソース。フランス料理の技法で日本の食材をアレンジした初夏らしい一皿となっております。メインはガイアフロー静岡蒸溜所のウイスキーの風味をまとわせた仔羊のグリエをお愉しみください」。