東急ハーヴェストクラブ鬼怒川
昔から“良い杉が育つところでは良い酒ができる”といわれており、
日光杉並木を有する日光市今市地区にも長い歴史を持つ酒蔵が存在する。
酒造りの肝は大谷川を流れる、日光連山の伏流水。
美しい水が生み出した地元の魅力を探るべく、
ハーヴェストクラブスタッフが老舗の造り酒屋を訪ねる。
My Harvest
日光市今市地区は、日光山麓の標高400mに位置する大谷川の扇状地。中禅寺湖、華厳の滝、大谷川を通って湧き出す日光連山の伏流水と、冬の冷涼な気候を利用して良質な日本酒を醸している。今回は東武鉄道下今市駅から徒歩圏の、予約制で酒蔵見学もできる老舗酒蔵2軒を巡る。
その一つが1880(明治13)年創業の片山酒造だ。新潟県柏崎市出身の初代が良い水を求めて今市にたどり着いたという。看板商品の原酒は、柏崎の一字を取り『柏盛』と命名した。
片山酒造の醸造のこだわりは、昔ながらの佐瀬式というもろみの搾り方だ。もろみは栃木県産の酒米五百万石に酒母、麹、水を加えて発酵させたもの。仕込みタンク一つにつき、もろみ約4000リットルを人の手で500枚の酒袋に袋詰めし、木槽(佐瀬式圧搾機)に積み重ねて3日間かけてゆっくり搾っていく。
「加圧しすぎない佐瀬式の製法で造られた『柏盛』は、雑味のないすっきりとした味わいが特徴です。特に、最初に自重で滲み出た無濾過の生原酒『素顔』はおすすめですね」(岡田)。
「無加圧状態で搾られた初日の日本酒と、少し加圧して搾られた日本酒では味わいが異なります。ぜひ、酒蔵見学の試飲で実感してください」(大島)。
渡邊佐平商店は、1842(天保13)年、江戸時代創業の酒蔵。「純米醸造酒こそ本来の地酒である」との信条のもと、全製造量中の約90%が純米醸造酒となっている。おすすめの純米吟醸『日光誉』は、日光山麓の水田で育った酒米五百万石、大谷川の伏流水、栃木県産酵母を使い地元の下野杜氏が醸す、まさに栃木の地酒だ。醸造用アルコールや糖類を一切添加しないので舌触りがなめらかで味にふくらみがある。
また、生酛純米酒『尊徳』は燗酒コンテストで金賞を受賞した銘酒。現在は酒造りに必要な乳酸を添加する速醸という製法が主流だが、『尊徳』は蔵内の自然の微生物の力で乳酸を培養する昔ながらの生酛造りを採用。速醸より倍以上の時間がかかるが落ち着いた味わいに仕上がるという。
「純米吟醸『日光誉』は米の旨味が感じられ、香りも爽やかなので冷やしてグラスで飲まれるのもおすすめです」(岡田)。
「渡邊佐平商店では、酒蔵見学のほか日本酒教室も開催しています。酒の仕込み水を使ったサイダー、酒粕を使った醤油やバームクーヘンもあるのでお土産によさそうですね」(大島)。
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