東急ハーヴェストクラブ天城高原
食育とは、さまざまな食に関する経験を通じて食べ物を選択する力を養うこと。
地域の産物や歴史など食文化を理解することもその一環。
天城エリアには、渓流の女王といわれるアマゴ、清流がつくるわさびや豆腐、
森が育てる原木しいたけなど特産品の生産者を訪れ学びながら収穫体験ができるスポットもあるので、
夏休みのこの時期、三世代で食育体験を楽しんでみてはいかがだろうか。
My Harvest
天城山系を源流とし、伊豆市の中心を流れ駿河湾に注ぐ狩野川は鮎釣りのメッカとして全国的に知られている。その狩野川の上流部にあたる本谷川には、伊豆を北限とするアマゴも棲息している。アマゴは清流に棲むヤマメに似た川魚で体長は15〜20cm、クセのない旨味を感じる味わいで、その姿の美しさから渓流の女王とも称されている。
近年では、このアマゴの養殖も行われており、地域の特産品として知名度が上がってきた。わさび田から引き込んだ清流を使い3年をかけて40cm以上に育てた下山養魚場の「天城紅姫あまご」は平成23年度のしずおか食セレクションにも認定された。身の色は薄いサーモンピンクで、適度に脂が乗って自然な甘みと食べごたえがあるのが特徴。天城紅姫あまごはホテルのレストランで楽しむことができる。
下山養魚場では、浄蓮の滝を臨む本谷川の渓流を使った天城国際鱒釣場も展開しており、アマゴやニジマスの渓流釣りも楽しめる。初めてでも魚が潜んでいるところや釣り方のコツなども教えてもらえるので、ぜひ挑戦してみてはいかがだろう。自らの力で食を得る貴重な体験や、清らかな自然に囲まれて釣りたての魚をその場でコンロで焼いて食べる喜びなど、思い出深い旅の1ページになるだろう。
天城紅姫あまごは餌に甲殻類のアスタキサンチンを加えることでサーモンピンクの身の色に。黄色い卵を塩漬けにした黄金(こがね)いくらも人気。下山養魚場が運営する料理店「あまご茶屋」では天城紅姫あまごを使った料理を味わえるため、ランチにおすすめ。
伊豆のわさびの多くは沢わさびで、1745年ごろ現在の伊豆市湯ヶ島の農家に生まれた板垣勘四郎が静岡の有東木村から苗を譲り受け、植えたことに始まると言われている。伊豆のわさび田の多くは地盤を深く掘り下げ、大きな石から小さな石、砂礫を順に積みあげる畳石式が主流。水の不純物が浄化され、おいしいわさびができるという。わさびの成長はとてもゆっくりで、苗を植え付けてから収穫までは約1年から2年を要する。
本谷川の下流にあたる湯ヶ島地区はきれいな湧き水が豊富にあることからわさび農園が点在。その一つ「滝尻わさび園」では、事前予約制でわさび田の見学やわさびの収穫体験もできる。実は私たちが食べているわさびは根ではなく根茎と呼ばれるところ。そんな説明を聞きながら、収穫体験では長靴を履いて清流が流れるわさび田に入り大きく伸びた葉をかき分け、付け根にある根茎を持ってゆっくり引き抜く。収穫したわさびは、作業場に持ち込み、葉と根をていねいに取り除き、持ち帰ることができる。また、希望があれば、真妻種(まづま)わさびと実生(みしょう)種わさびの食べ比べも楽しむことができる。
わさびには、水の中で育つ沢わさびと畑で育つ陸わさびがある。沢わさびは生食用に、陸わさびはわさび漬けなどに用いられる。沢わさびにも種類があり滝尻わさび園では風味の強い真妻種とマイルドな実生種を栽培している。
中伊豆地区は、しいたけ栽培発祥の地といわれ古くから良質な原木しいたけの産地として知られている。一年中栽培できる菌床しいたけに対し、主に春と秋に収穫される原木しいたけは旨味が強いため乾燥しいたけとして流通されることが多いという。
「修善寺しいたけの里」では、コナラやヤマザクラの丸太にシイタケ菌を打ち込む昔ながらの製法で原木しいたけを生産しており、収穫体験もできる。生産過程や、原木を森で2年間寝かせてハウスで一年中栽培可能にする方法などの説明も興味深い。採りたての原木しいたけをバーベキューで味わうことができるので、そのおいしさを実感してほしい。
よく聞く“どんこ”はしいたけの品種ではなく、傘の部分が開ききっておらず丸く肉厚に見える乾燥しいたけのこと。傘が開いて平べったく見えるものは“こうしん”と呼ぶ。
伊豆市にある地産品直売所の「伊豆大見の郷 季多楽」。同店では、近隣の農家から毎朝届く新鮮な野菜、漬物などの加工品や産みたて卵のほか、地元の豆腐店が自家生産する大見豆腐も人気を博している。大見豆腐は伊豆産の大豆“ふくゆたか”、戸田のにがり、天城山の名水を使い、ふくよかな大豆の風味が感じられるのが特徴。予約制でこの美味しい豆腐づくりの体験もできる。体験では寸胴鍋で80℃に熱した豆乳ににがりを入れ、固まりかけた豆乳を木綿の布を敷いた木型に移して圧をかけて成形する木綿豆腐をつくる。豆乳やにがりを味見したり、油揚げやがんもどきなどの製造過程も解説してくれる。先人たちが創り上げてきた日本の食文化の奥深さに感慨が深まるに違いない。
木綿豆腐をつくる工程で、中型箱に入れる前の「寄せた状態」のものをおぼろ豆腐という。また、凝固剤を入れた豆乳を型箱に入れ圧搾せずに固めたものを絹ごし豆腐という。