東急ハーヴェストクラブ山中湖マウント富士
東急ハーヴェストクラブ山中湖マウント富士から車で約20分、
富士山の北麓に位置する富士吉田市とその周辺は、
千年以上の歴史を有する織物の町。
平安時代から租税として納められていた甲斐絹がそのルーツだ。
江戸時代には産業として奨励された分業制度や技術が蓄積され、
明治と昭和期にそれが花開いた。
現在は家族経営などの小さな工場が集積している。
この地域でつくられる織物の特徴は、
先染、細番手、高密度、多品種、そして高い技術力だ。
これまではネクタイや服飾、インテリア、傘などのメーカーから受注した生地など
OEM生産を中心に行ってきたが、
十数年前からは若手経営者らを中心に個性を生かした
ファクトリーブランドも立ち上がりはじめている。
「ふじやま織」としてブランディングが進む古き良き新しいハタオリの町、
富士吉田地区を訪れてみたい。
My Harvest
日本の伝統織物の一つ、金襴緞子。繊細かつきらびやかで、浮かび上がるような美しい文様が特徴だ。富士吉田市の光織物では、細い糸を高密度で織り上げる高い技術力を駆使し、60年以上に渡って、舞台衣装や雛人形などに使われる金襴緞子や掛け軸に用いられる表装裂地などを製造している。
近年ではデザイナーとコラボレーションしたオリジナルブランドも展開。毎日が吉日をテーマに金襴緞子を使った御朱印帳やお守り、ブックカバーなどをラインナップする雑貨ブランド「kichijitsu(キチジツ)」や、銭湯をテーマにトートバッグやポーチなどを製造販売するブランド「IIYU TEXTILE(イイユテキスタイル)」などを立ち上げ、ファクトリーショップも常設。また、機織りの様子が見られる工場見学や、御朱印帳やお守り、うちわ作りなどを体験できるワークショップも開催している。
持っていて愉しくなる傘、ちょっと素敵に見える傘、大切に使いたくなる傘、そんな傘を製造販売している槙田商店。江戸末期の1866年に卸問屋として創業し、1950年代から傘づくりを始めて2010年に独自の傘ブランド「槇田商店」を立ち上げたという。
槙田商店では、傘生地に先染糸で模様を織り込むジャガード織りを使っていることが特徴だ。そのため織り生地ならではの奥行き感があり、傘をさしたときは内側から色が反転した柄を楽しむこともできる。こうした傘生地の裁断、検品、コマを縫い合わせる中縫い、傘の骨へ縫い付ける中綴じまですべて手作業で一本一本ていねいに仕上げている。
槙田商店本社の一画にはショップも併設されているので、旅の思い出としてご自分用に、あるいは大切な方へのプレゼント用に、お気に入りの一品を見つけてみては。
1935年に創業し、親機としてスーツの裏地や座布団、寝具、風呂敷などの生地を製造していた羽田忠織物。二代目からは細番(おやばた)手高密度の技術力を生かし、ネクタイづくりにも着手。現在、三代目が代表となり2008年にファクトリーブランド「HADACHU」を立ち上げて、オリジナルネクタイづくりに取り組んでいる。店頭に並ぶネクタイはすべて代表がデザインし、織っているという。生地はシルク100%のジャガード織が中心でビジネススーツ向けをはじめ、カジュアルな服装にも合わせられるデザインなど多彩なラインナップだ。リバーシブルタイプやオーガンジータイプなどユニークなデザインもあり、見ていて愉しい。購入者の半数は女性で、プレゼント用にも好評だ。
河口湖畔の複合店舗施設の「富士大石ハナテラス」には、1916年に西桂町で創業した山崎織物が自社ブランドの直営店「富士桜工房」を出店。〝心に花を咲かせる〟をテーマに紅藤色、若草色、小豆色など日本の伝統色で彩られたストールやネクタイ、雑貨などを販売している。特に天然素材の風合いを生かしたふんわりやさしい肌触りのストールは自信作。さらに同店では、機織り会社ごとに多様な商品をつくる富士吉田地区の特徴を発信するべく、傘、リネンタオル、バッグ、オーガニックコットンなど地元企業の製品も扱っており、さまざまなふじやま織の魅力に触れることができる。
富士急行線富士山駅のショッピングセンター、Q-STA(キュースタ)の中にある「ヤマナシハタオリトラベル MILL SHOP」には、ふじやま織の生地を使って地元のファクトリーブランドがつくる多彩なプロダクトが大集合。個性あふれるストール、ネクタイ、傘などがファクトリーごとに出品されており多品種を展開するふじやま織の特徴がよく分かる。
また、駅前にある「ハタオリマチ案内所」でも、ふじやま織の生地やファクトリーブランドの商品を買えるほか、富士吉田地区の織物の歴史や工場見学情報なども入手できるので、散策始めに訪れるのがおすすめだ。