京都が最も美しく彩られる紅葉の時期。その華やぎにさらに艶を添えるのが、芸舞妓さんが花街を歩く光景だ。花街ではお座敷を設けるお茶屋、芸舞妓を手配する置屋、食事を供する仕出し屋が協業して宴席を盛り上げる。こうした花街が京都には5つあるが、その中で最も古くから歴史を刻んでいるのが北野天満宮の東参道に広がる上七軒だ。東急ハーヴェストクラブ京都鷹峯&VIALAからは車で約10分、RESERVE京都東山からは約20分。そぞろ歩きも楽しい上七軒を紹介しよう。
上七軒の歴史は室町時代にまで遡る。北野天満宮社殿で火災が発生し、修復木材の余りを用いて、東門前に七軒の茶店が建てられたのが起こりだ。後に太閤秀吉が北野天満宮と周辺の松原で大茶会を開き、茶屋が供した〝御手洗団子〟をたいそう気に入る。そして御手洗団子を商う特権とお茶屋株を許可し茶屋街が始まった。やがて、茶屋街は織物の街・西陣の奥座敷として繁栄を極め、いまも10軒のお茶屋が伝統と文化を受け継いでいる。
この上七軒で芸妓として30年以上活躍している梅嘉（うめか）さんは、歴史文化や着物が好きでこの世界に入ったそうだ。
「京の文化は総合芸術です。掛け軸や生けてある花、座敷の設え、器、着物、帯、小物など一つ一つの質の高さにいつも刺激を受けています。それらを作る職人さんに恥じないよう、私も宴席を盛り上げる一つのピースとして有りたいと思っています。京都五花街の中でも最も古い上七軒の風情を味わいながらゆっくりと街歩きをお楽しみください」。
歴史とプライドに裏打ちされた上七軒。特集では梅嘉（うめか）さんにおすすめいただいたスポットを巡る。

上七軒歌舞会

京都府京都市上京区今出川通七本松西入真盛町

TEL／075-461-0148

上七軒花街では毎秋、芸舞妓が日ごろの稽古の成果を発表する「寿会」が催される。一般に公開されるので芸舞妓の踊りを直接見ることができる貴重なイベントとなっている。このほか春には創作演目が楽しみな「北野をどり」、夏季には舞妓さんたちと直接話ができるビアガーデンも開催される。

北野天満宮「史跡御土居のもみじ苑」

京都府京都市上京区馬喰町

TEL／075-461-0005（北野天満宮社務所）

参拝時間／7:00〜17:00

菅原道真公を御祭神として祀る北野天満宮は、全国約1万2000社の天満宮、天神社の総本社。古来、北野の天神さまと親しまれ、災難厄除け、学業成就、文化芸能などの神社として知られている。秀吉公が洛中洛外の境界に水防のため築いた御土居の一部が残る、境内の西側一帯は約350本の紅葉が植えられたもみじ苑となっている。紅葉シーズンの2024年11月9日（土）～12月8日（日）は夜間ライトアップも実施予定なのでお見逃しなく。

元茶屋を改装した和空間にがま口数百種を揃える専門店

#01 がま口・口金まつひろ商店

バッグ、財布などの金具“がまぐち口金”の卸売業を営むまつひろ商店が出店したがま口専門店。元茶屋だった店舗はたたきや坪庭など往時の風情が随所に感じられる。上七軒に出店したのは静かに時が流れる街で、ゆっくりと時間を掛けてお好みの一品を選んでもらいたいとの思いから。店頭に並ぶがま口は、さまざまな形や大きさ、デザインがあり、財布やバッグとしてはもちろん、携帯ケースやモバイルバッテリー入れにもぴったり。これらはすべて職人が一つ一つ手仕事で作っており、どれもほっこり心温まるような趣きだ。月に1～２回は、生地を選び、芯材と内張りをミシンがけして、金具を装着して完成させる約2時間のがま口作り教室も開催しているのでぜひ挑戦してみては。

京都府京都市上京区今出川通七本松西入真盛町716

TEL／075-467-1927

営業時間／11:00～17:00（土日祝は18:00まで）

休業日／水曜定休（祝日または25日が水曜日の場合、翌日や翌26日木曜休業）

菓子文化を通して京都の歴史と伝統を表現

#02 有職菓子御調進所老松北野店（本店）

明治41年創業の和菓子屋で、芸舞妓さんも御用達の老舗。当主は平安時代の宮廷祭祇官の流れをくむ家系で、宮廷に伝わる作法を記した有職故実にのっとった儀式や典礼に用いる菓子を手がけたことから、屋号を有職菓子御調進所老松としたそうだ。季節ごとに色々な菓子が並ぶ。しっとりとした落雁の表面に公家が乗る牛車の模様がほどこされた代表銘菓「御所車」。金柑や胡桃など菓子の起源でもある木の実や果物を使った「山人艸果」など、伝統を守りつつも常に新しい菓子を生み出している。

京都府京都市上京区今出川通御前通東入社家長屋町675-2

TEL／075-463-3050

営業時間／9:00～17:00

休業日／不定休

芸舞妓さんたちのファンも多いステーキハウス

#03 上七軒ゆう

元フレンチ料理人が切り盛りするステーキ専門店。牛肉の品質に妥協しないのがモットーだ。ランチのおすすめは芸舞妓さんにも人気の「塩ハンバーグ」（4,000円）。黒毛和牛A５ランクの雌牛のみを使用し、約1〜2カ月熟成させたフィレ肉とバラ肉で作るハンバーグで5cm近い厚みがある。一口目は何もつけず極上の和牛香と旨味を愉しんで。フランス・ゲランド産の天然塩を少しつけるとまた格別の味わいに。ランチセットのニンジンスープ目当てのお客さまも多いという。食材に限りがあるので事前予約して訪れよう。

京都府京都市上京区今出川通御前入社家長屋町672-3

TEL／075-466-6625

営業時間／11:30～14:00、17:30〜22:00

休業日／月曜定休

知恵と技で美しくきれいに暮らす日本人の美学に注目したアンテナショップ

#04 弓月京店（上七軒）

西陣御召の織元が出店した和小物や着物を扱うアンテナショップ。店舗は江戸末期に建てられたお茶屋を改装したもの。階段箪笥や芸舞妓が舞いを披露した踊り場などに名残が垣間見られる。1階には、風呂敷を縫って仕立てる東袋（あずまぶくろ）をヒントにした「おちょぼバッグ」やおじゃみ（お手玉）がまぐち、衣風船などの西陣御召の和小物、2階のギャラリーでは弓月の工房で織り上げた西陣御召の着物と帯などを展示。西陣御召とは先染めした撚り糸を用いる最高級の絹織物で、光沢と独特のしゃり感が特徴。かつて徳川家斉が好んだことから「御召し」の名がついたとされている。ぜひ、京都の伝統工芸に触れ、お気に入りを見つけて旅の思い出に連れて帰ろう。

京都府京都市上京区今出川通七本松西入真盛町 701

TEL／075-467-8778

営業時間／10:00～17:00

休業日／水曜日、第1・3・5日曜