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温泉や歴史の草津だけではない、新スポット「裏草津」にひたる

2024/10/30

2021年に誕生した、草津温泉の新スポット「裏草津」。多くの観光客でにぎわう湯畑周辺を表とするなら、まさに裏と呼べる静かなエリアを再整備した草津の新名所です。湯畑から西の河原通りとは逆の東方向へ、狭い路地などを抜けて5分ほど歩いた一角に位置し、「漫画堂」やカフェ、貸切湯のほか、全国でも珍しい顔湯などがそろっています。木造を多用した洗練されたビジュアルも目を引く裏草津。レトロな温泉街とは一線を画すエリアを手がけた、開発者の想いとともにその魅力を探ります。

街の人が何度も利用したくなる空間に

この裏草津、企画から担当したのが、2013年に完成した御座之湯に始まり、湯路広場、熱乃湯など、草津の新しい顔を数多く手がけてきた北山創造研究所。その代表を務める北山孝雄さんに、再開発の背景について教えてもらいました。初めて草津を訪れた際に「何もない」と感じたエリアに、北山さんは新たな命を注入。蘇らせることに成功しました。

「17年ほど前に草津の再開発についての話をいただいたのですが、このエリアには小径が多いので小径と広場をつなげることで面白い場所ができるとも思いました」(北山さん)

長い年月をかけて完成させた裏草津。写真映えするきれいな木造の建物が点在するスタイリッシュなエリアですが、観光客に向けただけのものではないのだそう。

「視察した当時は観光客が減っていた頃で、観光客を呼びたいというのももちろんですが、街の人たちが楽しめる場所を作りたかったというのが本来の目的。住民が実際に使うことで観光客も使ってくれるようになる。無料の施設が多いですが、お金を使わなくても楽しい場所だからこそ何度も利用してもらえることになり、それが街の豊かさにもつながると思っています」(北山さん)
湯畑から少し離れ、のんびり、ゆったり、静かに時を過ごしてもらうためにつくられ、同時に街を豊かにする働きも期待される裏草津。ここからは、オープンから数年がたち、その効果が如実に現れている新エリアの注目スポットをいくつか紹介します。湯畑の足湯近くにある細い路地が、何度も通いたくなる裏草津への入口です。

【裏草津での注目スポット1】
約1万冊の漫画を年代別に陳列した「漫画堂」

新しさと風情が共存する木造2階建ての館内で、木の温もりを感じながら漫画の世界に没頭できる「漫画堂」。1980年に“来草”したちばてつや氏や赤塚不二夫氏ら漫画集団14名や草津温泉にゆかりのある漫画家の作品を中心に、漫画界のレジェンドやクラシック、ニューウェーブなど、約1万冊の漫画を展示しています。
漫画は古いもので60年代の作品から最新の作品まで、街の時代の変遷を感じられるように年代ごとに陳列。懐かしさや思い出を感じながらくつろぐ時間を過ごせるはずです。併設する「地蔵カフェ 月の貌」や天然芝を完備した高台広場に漫画を持ち出せるので、思い思いの場所で悦に浸れるのもうれしいポイント。
【施設情報】
「漫画堂」
住所:群馬県吾妻郡草津町草津132-1
電話番号:0279-82-5641(地蔵カフェ月の貌)
営業時間:9:00~17:00(ラストオーダー16:00)
休み:なし(メンテナンス休館あり)
料金:大人400円(2時間)
駐車場:なし

【裏草津での注目スポット2】
風景と共に手作りスイーツをじっくり味わいたい「地蔵カフェ 月の貌」

俳人・小林一茶が“来草”した際に残した一句「湯けむりにふすぼりもせぬ月の貌」が店名の由来となる「地蔵カフェ 月の貌」。旧友との再会をしみじみと楽しむ句から、この場所でも大切な人との時間を過ごしてほしいという願いが込められています。四季折々の表情を見せてくれるシンボルツリーのもみじを望む店内では、手作りスイーツと厳選されたドリンクを提供。朝9時から営業しているので朝食代わりに軽食を楽しめるほか、ランチやティータイムにも利用したい場所です。
【施設情報】
「地蔵カフェ 月の貌」
住所:群馬県吾妻郡草津町132-1
電話番号:0279-82-5641
営業時間:9:00~17:00(ラストオーダー16:30)
休み:なし(メンテナンス休館あり)
駐車場:なし

【裏草津での注目スポット3】
のんびり過ごすがテーマの「高台広場」

「高台広場」は、「漫画堂」や「地蔵カフェ 月の貌」と同じ高台にある、緑豊かな段々畑のようなエリア。「のんびり過ごす」をテーマに作られた、誰もがリラックスできる空間です。高台の一番上に位置する「地蔵カフェ 月の貌」で眺望を楽しみながら優雅なティータイムを過ごせるほか、夜はロマンティックな灯りに照らされる特に映えるスポットに。
【施設情報】
「高台広場」
・住所:群馬県吾妻郡草津町草津
・駐車場:なし

【裏草津での注目スポット4】
無料でいつでも利用できる「顔湯・足湯・手洗乃湯」

高台広場がある一角から階段を下った先は、地蔵源泉などがあるエリア。その中心に設置された「顔湯・足湯・手洗乃湯」は、24時間いつでも無料で利用できます。四角い箱の中を覗き込み、温泉から湧き上がる蒸気を顔に浴びる顔湯は、草津エリアではここだけ。全国でもなかなかないユニークな温泉は、美肌効果に期待できると評判です。
【施設情報】
「顔湯・足湯・手洗乃湯」
住所:群馬県吾妻郡草津町草津
駐車場:なし

【裏草津での注目スポット5】
名湯を独り占めできる「伝統湯 地蔵」

同じ広場にある「伝統湯 地蔵」は、観光客も無料で利用できる共同浴場「地蔵の湯」の中にある、有料の貸切温泉施設。地蔵源泉を引いた良質な温泉を、他にお客がいない貸切状態で利用できると話題です。利用は、9:00、10:30、12:00、13:30、15:00~の1時間単位で受付。湯触りが柔らかく、肌がすべすべになる湯を独占できる贅沢な時間を堪能しましょう。
【施設情報】
「伝統湯 地蔵」
住所:群馬県吾妻郡草津町草津299
電話番号:0279-88-1320(予約専用)
営業時間:9:00~16:00(最終入館15:00)
休み:水曜
料金:1団体1時間3500円(1団体10名まで)
駐車場:なし

【裏草津での注目スポット6】
オリジナルの石づくりを体験できる「百年石別邸」

「百年石別邸」は、草津温泉の泉質を生かした貴重な体験ができる施設。用意された石灰石に思い思いの絵や文字を描くと、後日世界に一つだけの「百年石」が届きます。草津の強酸性の湯が、エナメルペイントで絵付けした部分以外の石を溶かすことで、文字や絵が浮かび上がって見える仕組み。作業時間は約1時間、作品は約1週間後に着払い宅配便で到着します。
【施設情報】
「百年石別邸」
住所:群馬県吾妻郡草津町草津302-3
電話番号:0279-88-1320
営業時間:9:00~16:00(最終受付15:00)
休み:水曜
料金:1つ500円
駐車場:なし
2022年には裏草津エリアに新たなホテルがオープンし、2023年には草津温泉の玄関口として温泉門も整備された草津温泉。古くから多くの人を惹きつけてきた日本屈指の温泉街は、裏草津の誕生以降もその進化を止めることはありません。ますます豊かになる、人を呼び続けるエネルギーにあふれた街にありながら、時間がゆるやかに流れる裏草津。日々アップデートされる都会の暮らしに疲れたら、この場所で今後についてじっくり考えてみてはいかがでしょう。

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