今月の懐石を仕込んでいる際に見つけたものです。
鯛の鯛とは、骨が形成されている魚の肩帯の一部で、姿が鯛に
似ている部位のことです。取り分け、古くから”真鯛の鯛”は
硬骨魚類の中でも、最も形が美しいとされ、
「めでたい鯛の中で更にめでたい形である」といわれ、縁起物
として喜ばれていたようです。
また、取り出す際に頭側(肩甲骨)と尾側(鳥口骨)が真ん中
から折れ易いので綺麗に取り出す難易度は高めです。
さて、実際にこの鯛のお話。
これは野〆(釣ってすぐ〆たもの)の天然鯛を使っております。
養殖の鯛と比べるとヒレが非常に発達していて、身もピンク色。
ピンク色なのは運動量が多く、体脂肪率が低く、何よりも
筋肉質な為です。値段も養殖より遥に高価なものであります。
これは、今月の小懐石の魚料理「米茄子鯛味噌焼き」の
”鯛味噌”に使う為のものでした。これだけの立派な鯛を刺身
にせず、相当贅沢な使い道です。
正直、鯛出汁の利いた茄子の田楽…美味しいに決まってます。笑
仕込みについても、一尾丸々蒸し上げ、ひとつひとつの身を解し、
小骨や異物を手作業で取り除くという、いささか手間の掛かった
作業でした。そんな手間や努力もやぶさかではないところが、
一游の料理の胸を張れるところなんですよね。
私の個人的なお薦め料理として紹介させて頂きます。
さて、葉っぱも少しずつ色付き始めて、すすきも順調。
少しずつ秋が深まりつつあります。
皆様、秋の箱根翡翠へ是非お越しくださいませ。